汝の敵を愛せ
アルフォンソ・リンギス
汝の敵を愛せ
中村裕子 訳/田崎英明 解説
発行元 : 洛北出版/発売元 : 松籟社
四六判 ・ 上製 ・ 320頁
2004年7月発行
ISBN 4-87984-801-8 C 0010
本体価格 2,600円
 アルフォンソ・リンギスは、こんにち、最も異彩をはなつ哲学者である。この本では、私たちを、イースター島、日本、ジャワ、ブラジルへの旅に連れだす。彼は、なみはずれた描写力で、無垢、罪悪への愛、喜びと暴力との関係、動物の宗教について、私たちに語りかけてくる。仕事や理性の領域が崩れたとき、私たちは、不安とともに、喜びに満ちた興奮や恍惚感を感じるのではないか? 私たちは、死を受け入れることだけでなく、臨終の喜びをも理解できるのではないか? リンギスは、異邦の土地での日常生活から生じる強烈な体験から、理性を出しぬき凌駕する情動や熱情を描きだす。

リンギスは、哲学のテクストの諸要素を、とくにメルロ=ポンティ、レヴィナス、ギブソン、そしてニーチェ、ドゥルーズの諸要素を、さまざまな土地や文化での日常生活から生じる奇妙な経験と混ぜあわせる。その印象的で大胆な表現は、哲学や文学、社会学といった領域だけでなく、フェミニズムやポストコロニアリズム論のあいだでも、さまざまな議論を引き起こしてきた。

この本は、哲学によって見落とされがちな、自分を浪費することの喜びに満ちた瞬間、侵害されることに身を晒すという出来事を探究している。それは、哲学が生を理解し生をよく生きる方法を提供しようとすれば、ぜひとも扱わなければならないような瞬間であり出来事である。

(本書より抜粋)「自分を魅了するひとと効果的にコミュニケートするというのは、相手の統一、性質、独立性、自立性を打ち破る、つまり相手を傷つけるということである。精神的・物質的統一の裂け目を通じてのコミュニケーションは、結果を考慮することなく、渦を巻く。コミュニケーションそれ自体が「善」であるわけではない。コミュニケーションは将来への配慮をことごとく排除する。コミュニケーションは利害へのいかなる配慮も排除する。それゆえ、起こることや存在するものに直面して苦しむひとすべてに、私たちは惹かれるのだ。」(163頁より)
『汝の敵を愛せ』





『汝の敵を愛せ』
本書の目次
汝の敵を愛せ 画像
世界のへそ
獣 性

動物の宗教
祝福と呪い
侵 害
イノセンス
破局の時
美と情欲
臨終の喜び
贈り物
汝の敵を愛せ

原 註
解説[田崎英明]
訳者あとがき[中村裕子]

Dangerous Emotions
by Alphonso Lingis
Copyright 2000 The Regents of the University of California
Japanese translation published by arrangement with the University of California Press
『汝の敵を愛せ』
本書の中身
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翻訳者紹介

中村 裕子 (なかむら・ひろこ) NAKAMURA Hiroko

1965年生。2000年,神戸大学大学院文化学研究科(博士課程)単位取得退学。現在,神戸大学非常勤講師。専門は英文学。翻訳書に,フィル・モロン『フロイトと作られた記憶』(岩波書店,近刊),ネッド・ウォード『ロンドン・スパイーー都市住民の生活探訪』(共訳,法政大学出版局,2000年),ポール・ポプラウスキー編著『ジェイン・オースティン事典』(共訳,鷹書房弓プレス,2003年)などがある。
解説者紹介

田崎 英明 (たざき・ひであき) TAZAKI Hideaki

1960年生。専門はセクシュアリティと「政治的なるもの」の理論。
著書に『ジェンダー/セクシュアリティ』(岩波書店,2000年),『売る身体/買う身体:セックスワーク論の射程』(編著,青弓社,1997年),『歴史とは何か』(共著,河出書房新社,1998年)などがある。論文に「無能な者たちの共同体」(『未来』,未來社)など。
関連書

アルフォンソ・リンギス『異邦の身体』〔松本潤一郎・笹田恭史・杉本隆久 訳、河出書房新社、2005年〕
アルフォンソ・リンギス『信頼』〔岩本正恵 訳、青土社、2006年〕
森巣 博『無境界家族』〔集英社文庫、2002〕
メルロ=ポンティ『見えるものと見えないもの』〔滝浦静雄・木田 元 訳、1989年〕
エマニュエル・レヴィナス『全体性と無限』〔熊野純彦 訳、岩波文庫(上・下巻)2006年〕
ジャン=リュック・ナンシー『複数にして単数の存在』〔加藤恵介訳、2005年〕
書評

◆ 富山 太佳夫さん書評『毎日新聞』2004年9月26日付朝刊
◆ ジュンク堂・福島 聡さん書評『書標』2004年10月号
◆ 東 琢磨さん書評『インパクション』143号
◆ 管 啓次郎さん書評『UP』2004年10月号
◆ 上野俊哉さん書評『読書人』2004年11月12日号
◆ 真島一郎さん書評『図書新聞』2004年12月4日号
◆ 宇野邦一さん書評「ディオニソスのエコロジー」『未来』2004年12月号
◆ 中山 元さん書評『i feel』2005年31号

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